偉人の伝記は聖人君主ばかりだが
偉人の伝記物を読んだことがあるでしょうか?
小学生の時に、学級文庫や図書室にシリーズで並んでいたことを覚えています。
そして、読んでいました。
どの偉人の伝記も、立派な人として書いています。
研究や事業を始めとした偉業を成し遂げるまで辛抱強く、また困難があろうとも心清く、信念をもってやり通す。
あるいは人に優しく、自分に厳しく。
偉人はまるで聖人君主のようでした。
しかし、それは事実でしょうか。
見方を変えてみると、どうなるでしょう。
当時の常識からみると、変人や常識の通じない人とも言えます。
そんな新しい側面から描いた伝記物で衝撃をうけたのが、「黒博物館 ゴースト アンド レディ」です。
黒博物館 ゴースト アンド レディとは
主人公は、ナイチンゲール。
ナイチンゲールといえば、「クリミアの天使」「近代看護の確立者」として大変有名です。
伝記で描かれるナイチンゲールは、慈悲深くまっすぐな意志ををもって看護をする人です。
あらすじをざっと言ってみると。
ナイチンゲールと幽霊が出会う事により、ナイチンゲールの才能が花咲いて歴史に残る偉業をなしていきます。
幽霊のライバルとの争い、軍組織の中で周囲の軋轢と味方につける戦略、ナイチンゲール本人の信念を貫くさま。
漫画的な演出や登場人物の確執などはあります。
ですが、今までのナイチンゲールの伝記物とは一線を画しています。
この作品の中では、ナイチンゲールは従来のイメージ通りでありながらそうではない。
という絶妙なバランスの存在です。
彼女の行動は狂気か愛か?
それは読み手によって、全く印象が変わるでしょう。
作者は藤田和日郎
「うしおととら」「からくりサーカス」「月光条例」「双方亭壊すべし」の作者です。
私はこの人の描く表情が、とても好きです。
そして人の心の描き方の妙も、大好きです。
特に絶望から這い上がるときの、何とも言えない意志の強い瞳。
決意を決めたときのまっすぐな意志を感じる表情。
正に「心を揺さぶられる」というのが、ぴったりの迫力と説得力があります。
「黒博物館 ゴースト アンド レディ」も、存分に表情の魅力を味わえます。
ナイチンゲールの描き方が実に見事
「聖人君主で慈悲深い人」という、ナイチンゲールの伝記ではありません。
人間の行動や心理を深い洞察で描いている作者だからこそ描けた、ナイチンゲールの新しい物語だといえます。
「本物の天使は苦しんでいる人のために戦う人のことを言う」
作中のナイチンゲールのセリフです。
これを慈悲深い愛ととるか、彼女の狂気ととるか。
「人が偉業を成し遂げるとき、強い狂気をもって成し遂げる」
「人が偉業を成し遂げるとき、無限の愛をもって成し遂げる」
この作品を読んで、どちらを感じるでしょうか?
FGOのナイチンゲールが理解できる作品でもある
fateのサーヴァントは、人類史の英霊たちの一面を取り出しています。
FGOのナイチンゲールも、中々従来のイメージより狂気に近い意志の強さを感じるサーヴァントです。
そのことが理解できる作品でもあります。
ですのでゲームに興味がある人が読むと、結構納得がいくと思います。