そろそろアレな世代の話をしようか

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「フロイト1/2」(川原泉)は哲学的漫画であり優しさが詰まっている

川原泉の作品が好きです

私は川原泉の作品が好きです。

以前、川原泉作品について書きました。

 全体の感想と「甲子園の空に笑え」を中心にですが。

pomu2019ab.hatenablog.jp

時に哲学を感じさせる良作の宝庫

川原泉作品は、時に哲学的なものがあります。

哲学的と聞くと、難解であったり堅苦しい作品と思うかもしれません。

いえいえ。

とても柔らかく、それでいて心が温まったり、はっとする作品が多いんです。

 ファンタジーに逃げない助けてくれない

よくおとぎ話でありますよね。

不遇の主人公を、魔法使いや妖精などのように「人知を超えた存在」が助けてくれることが。

川原泉作品では、そのパターンがまずありません。

不思議な存在の登場人物はいますが、それだけです。

基本は主人公達が、自力で解決します。(背中を押してくれるきっかけにはなりますが)

ファンタジーな存在がいても、それは助けてくれません。

ファンタジーな世界があっても、そこに逃げ込みません。

読んでホロリスッキリするのが「フロイト1/2」

フロイト1/2」という不思議なタイトルの作品があります。

あらすじを紹介します。

大学生の瀬奈弓彦(せなゆみひこ)と小学生の篠崎梨生(しのざきりお)が、小田原城址公園で出会います。そして2人だけに見える不思議な提灯屋「風呂糸屋」で、2つ1組の提灯を半分ずつ購入します。「1組の夢を2人で分け合うなんて聞いたことがないからやめておいた方がいい」という店主(フロイト)の忠告を受けますが、気にしません。

そして2人は、お互いの夢の中を行き来します。

時が過ぎ、2人は出会います。

そして二人の人生が交錯していきます。

 

ここまで聞くと、恋愛してハッピーエンドでしょ?と想像するかもしれません。

一般的な少女漫画なら、それで終わりでしょう。

しかし川原泉作品は、そうはいきません。

目標が自縛という呪縛になる息苦しさ

弓彦は、ある理由で多額の借金を抱えてしまいます。

その返済をするために一生懸命お金を貯めようとして、夢も希望も捨てひたすらお金を稼ぐことが人生の目標です。

それが原因で、周囲の人間と軋轢が生じます。

そんな時に弓彦は梨生と出会い、言われます。

「弓彦君は、お金が好きだけど嫌いなんだね 。かわいそうだね」

 

目標が自分の全てを奪っている呪縛になっている事を、ずばりといい当てられてしまいます。

真実ほど、ぐさりと心に刺さるものはありません。

梨生は現実を受け入れつつ夢を見ている

実は梨生は、育児放棄をされた子供です。

幸いきちんと面倒を見てくれる家庭があり、実の家族として扱われています。

本人も実の家族と思っていますが、自分が養子であり育児放棄された存在であることも知っています。

複雑な環境の彼女ですが、「自分は不幸だ」「自分はこんなに可哀想だ」とおくびにも出しません。

のほほんと生きつつ現実を受け入れて、夢も見ています。

本当の強さとは何だろう

弓彦はある時、一人で「夢のない世界」をさまよい気が付きます。

「怖い寂しい暗い、こんな世界であいつはずっと一人でいたのか」

子供のようにオロオロと泣きべそをかきながら。

 

お金を稼ぐのが悪い、というのではありません。

夢も希望もなくした自分が、どんなに寂しくて孤独で弱いのか。

本当に強いのはどういうことなのか。

理知的な台詞と心にすっと溶け込む物語

フロイト1/2」は、時々理知的な台詞回しや言葉が出てきます。

これも現在の少女漫画では、まず見ないでしょう。

哲学的と先に書きましたが、説教臭くは全くありません。

ミヒャエル・エンデの作品に、どこか似た雰囲気を読後に感じました。

今でこそ読んで欲しい漫画の一つです。

 

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