美術館女子という企画をみて
美術館女子という企画を見た時、私は真っ先に企画のバランスの悪さに違和感と嫌悪感を感じました。
「美術館女子」とは
美術館女子とはなんであるか。
その定義は、実はこの企画の中ではっきりと明言していません。
企画を見て私が考えたのは
- 美術館を訪れる一般利用者の中で特に女性を指す言葉
- この企画で紹介する美術館で撮影をした撮影モデル限定の総称
- 美術館と撮影モデルのコラボ企画の企画名(特に女性を限定していない)
この企画の趣旨を読むと
地域に根ざした公立美術館の隠れた魅力やアートに触れる楽しさを、“映える写真”を通じて女性目線で再発見していく連載「美術館女子」
と書かれています。
それから考えると、美術館女子とは企画名と解釈するのが正しいのかもしれません。 しかしこの名前からくる違和感は、どうしても残ります。
企画内容を見て感じたこと
私が企画内容を見て感じたのは
- 美術作品や館内よりも、女性を全面に押し出した写真
- コメントの端々に「新しい私」という美術作品よりも女性中心の感想
- ”写真映え”を最優先しており、美術館は単に撮影スポットである
- 女性のポートレート写真という印象がとても強い
- 美術館内で自由に撮影ができるような印象を与えている
企画内容を見て一番感じるのが、「美術館や芸術作品の魅力ではなくアイドルのポートレートである」という事です。
「地域に根差した公立美術館の魅力」「女性目線での再発見」
この部分がとても弱いのです。
企画の趣旨を読んでいても、「アイドルのグラビア撮影を美術館でしただけ」としか見えません。
「誰を対象にしているのか」という明確なビジョンが、そもそもわかりません。
そのため説得力を感じないのです。
「美術館女子」という企画名の問題点
何よりも一番意図が伝わりにくいのが、「美術館女子」という企画名です。
何か事あるごとに「〇〇女子」「〇〇男子」という名前を付けてカテゴリーわけをしますが、これにうんざりしている人が多いのです。
「〇〇女子(男子)」は、そのジャンルから見ると少数派や珍しいという意味でつけられることが多い名前です。
刀剣女子という言葉を例に出します。
年配男性が多かった刀剣類の愛好家の世界に、某刀剣類を擬人化したゲームをきっかけに女性が興味を持ち始めました。
刀剣を見るために展示に行ったりクラウドファンディングに参加したりと、今までない活動が目立ち始めたことでそれらの女性に「刀剣女子」という名称がつきました。
これは少数派や珍しい、という意味で本来つけられています。
美術館は女性が一人で行くことも多く、元々女性客が多い場所でもあります。
自分が楽しんでいるものを外からいきなり「美術館女子」といわれて、喜ぶ人は殆どいません。
「女性が芸術を楽しむのは異質」
「美術館に行く女性は少数である」
美術を楽しむ人に「女子(男子)」という言葉をつけてもらいたくないし、個人の趣向に土足で入り込まないでほしい。
今まで楽しんでいた人達も含めて、性別に関係なく小馬鹿にされたように感じます。
本来の企画内容の意味を読み取る前にこの企画名に拒否反応を感じる人が多いのが、更にこの企画の問題点です。
企画名、企画内容の全てがちぐはぐ
本来の趣旨を知っても、「美術館女子」は何をしたいのかわかりにくいのです。
文章、写真、企画名、目的、タレント。
これらが全て別方向に向いている違和感。
パズルのピースがあってないのです。
本当なら美術館の魅力を新しい切り口で知ってもらう、というのが大元にあるのだと思います。
しかしはたから見ると白々しく見えるほどかみあってなくて、「どうしてこうなった」といいたくなりました。