「ジョジョの奇妙な冒険 第5部」を再度読んだ
「ジョジョの奇妙な冒険」はとても有名な漫画です。
読んだことは無いが作品の名前は聞いたことはある、という人も多いのではないでしょうか。
物凄く大雑把にいうと、ジョースター一族とディオとの何代にもわたって続く戦いの物語です。
例え直接対決がなくても、物語のどこかに因縁として両者が絡んできます。
絵は正直かなり癖が強いので、その時点で読まない人もいる漫画だと思います。
私もそうでした。
しかし読み進めていくうちに、その面白さにハマりました。
そんな「ジョジョの奇妙な冒険」ですが、第5部に個人的に最強で最恐と思うスタンドがいます。
それがゴールド・エクスペリエンス・レクイエム(略称としてGERやゴールド・E・レクイエムが使われることが多い)
初めて読んだときからからこのスタンドの能力は別格だと思っていましたが、改めて第5部を読み返して、その能力の恐ろしさに衝撃を受けました。
ゴールド・E・レクイエムという存在について
ゴールド・E・レクイエムは歴代のジョジョに登場するスタンドの中で、異質な存在です。
それは、「矢」によって進化したスタンドだから。
(スタンドとは精神力や超能力が具現化したもの、「矢」はスタンド能力を発動させるトリガーのようなもの)
基本的に、シリーズ全般で「矢」に適性がある者がスタンド能力を持ちます。
通常はこの時点で「矢」の役割は終わり。
しかし第5部は違います。
スタンドに「矢」を刺す事で、スタンドの更なる進化を促すのです。
その進化したスタンドが、ゴールド・E・レクイエム。
ゴールド・エクスペリエンスから進化して、ゴールド・E・レクイエムに。
能力は
ゴールド・エクスペリエンス:対象に生命を与える。それにより成長させたり、無機物を動物や植物に変化させることが可能。ただし死者を甦らせる事は出来ない。
ゴールド・E・レクイエム:何をやってもなかったことにされる。その為永遠に「結果」にたどり着けないで繰り返す。その「結果」をスタンド使い(ジョルノ)が知ることなく、能力が発動していることも認識できない
「たどり着かない」という無限に続く地獄
ゴールド・E・レクイエムの能力は作中で「『終わりがない』のが『終わり』」と言われています。
まさにその通り。
ゴールド・E・レクイエムのスタンド攻撃を受けたものは、「たどり着ける結果」に永遠にたどり着けません。
そして永遠に結果にたどり着けないまま、事態を繰り返すのです。
一度発動すると、ジョルノ自身も止められないと思います。(本人がそもそも発動していると認識できないため。「何かが起こっている」のは感知している)
作中で言うと、敵が未来予知で「ジョルノを殺す」という100%予知を見ても殺すという結果にたどり着きません。
そしてその過程で、ジョルノのスタンドに倒されます。
全く同じ場面ではないですが、この流れが永遠に続きます。
つまり自分が死ぬ直前まで戻り、確実な死を迎えます。
そしてまた死ぬ直前に戻って死に、また死ぬ直前にまで戻る。
これを様々なシチュエーションで繰り返すのです。
決して死ぬ事はなく、無限に「死ぬ」という痛みと苦しみを繰り返すのです。
このスタンドの能力だと、余りの苦痛と恐怖を終わらすために自死もできません。
恐らく精神が崩壊しても、死んだあとは元の精神状態に戻るでしょう。
蘇っても「いつ自分が死ぬのか」「誰に殺されるのか」「何が原因となるのか」が一切わからないまま、繰り返します。
まさに「たどり着かない」無限の苦しみ。
「命を与える」能力の進化が「命の循環」で「時間に関する能力」
進化前のゴールド・エクスペリエンスは命を与える事が能力ですが、その進化系がこの「結果にたどり着けず全てをゼロに戻して繰り返す」というのが中々興味深いです。
命を与える能力といっても、死を乗り越えることはできません。
一度死んだブチャラティが復活したように見えますが、あくまで一時的なものであって死は避けられないのです。
作中のゴールド・エクスペリエンスの「命を与える」という能力は大変応用範囲が広く、使い勝手もかなりいいです。
でもあくまで命の一方通行。
しかしゴールド・E・レクイエムは、命を循環させる能力ともいえます。
確実な死を繰り返すとしても、その度に命が復活します。
そこにあるのは、命の循環です。
同時に「時間に関する能力」です。
「ジョジョの奇妙な冒険」では、敵も味方もボスキャラは時間に関する能力を持ちます。
これにより、ジョルノが実質的にボスになったことがわかります。
命を奪って命を与え、時間を奪って時間を与える。
これって考え方によっては、神と呼ばれるものと同列といえる能力といえる気がするのです。
なぜこのようなスタンド能力になったのか考えた
ジョルノは「黄金の精神を持つ正義漢」ですが、決して品行方正な人物ではありません。
自分の信じる正義がありますが、法を遵守する気はありません。
実際5部の登場時には、違法行為をしっかりと働いています。
どちらかといえば暗い生い立ちの不良少年ですが、落ち切ってはいないんですね。
「悪を抑えるには悪の世界のトップになることが必要である」が、彼の行動の根幹です。
この考えは、世間一般から見れば歪んだ気高き精神の持ち主でしょう。
でも命に対して、真摯でもあります。
悪人は生命力が強い、という事は他の部でも言われています。
それも合わせて、命に関するスタンド能力なのでは?と思っています。