日常に潜む恐怖、腹痛
もし「日常に潜む恐怖は何か」といわれたら、私は腹痛です。
通勤時、旅行先、散歩中、レストラン、テスト中等々。
これが起こったら最後、楽しい時間は一瞬で吹き飛びます。
辛い時は更に辛い時になります。
集中力も全て吹っ飛ぶ破壊力。
しかも突然やってくるという気まぐれさ。
これほどの恐怖はあるでしょうか。
先日電車の中で腹痛に襲われ、死ぬかと思いました。
腹痛の時は全身全霊でマルチタスク
先日電車に乗っているときに、突然の腹痛に襲われました。
しかも間の悪いことに、駅と駅の距離が長い路線です。
乗客もそこそこいて、あまり身動きもできにくい状況でした。
こうなったら頭も体も「腹痛に耐えてどうするか」という事に、全身全霊の能力が使われます。
どのような事が内面で行われているかというと。
先ず考えるのが、電車がこのまま何事もなく次の駅に向かう事。
そして停車駅の構内のトイレの場所を脳内で必死に検索して、どう行けば最短で移動できるかシミュレーションします。
同時に「耐えろ、私の体」「お腹が痛いのは気のせい」「お願い、あと〇分耐えてくれ」と自分で自分に暗示をかけたりお腹を励ましもします。
痛さの波があるので、その間隔でどれだけ耐えられそうか計ります。
余りの痛さに表情に出そうになりますが、そこは我慢してぐっとこらえます。
腹痛であることが周りの人にバレるのが恥ずかしいからです。
人間の尊厳というかプライドです。
車内の吊り輪をぎゅっと握りしめて、時には短く握りなおしたりしてひたすら駅まで耐えつつ「神様仏様、どうか助けてください」と必死にお祈りもします。
お祈りとシミュレーションと暗示の同時進行という、マルチタスク。
そして駅に無事つくと、脳内シミュレーション通りに行動して事なきを得る、となりました。
全身全霊で腹痛という試練に立ち向かうのです。
あらゆる集中力と思考が全部割り振られます。
まさに戦い。
決して負けるわけにはいかない戦いが、人知れず行われているのです。
腹痛を絶えた人は皆勇者。
突然、というのが一番厄介
腹痛の一番厄介な所は、突然やってくること。
しかも苦痛をコントロールする事ができず、「起こってほしくない」と思う場面でなることが多々あります。
特にお腹が弱いわけではないのですが、やはり恐怖です。
腹痛になったときは、他人の平和そうな顔を見て「その状態と交換してほしい」と切実に何度思ったことか。
一度腹痛になると、痛さの波があるのも嫌です。
治ったと思ったらまた復活して、という事を何回か繰り返すときもあります。
天災じゃないかと思う事もあります。
日常の恐怖で、これほど厄介なものはあるでしょうか。