5話「伊平次を探せ」あらすじ
光秀は斎藤道三に、鉄砲の撃ち方と戦闘での有用性の疑問について語ります。
しかし「ではなぜ室町幕府が鉄砲を持とうとしているのか」という事に着目した道三の命令で、光秀は本能寺に鉄砲を詳しいものがいるので調べてこいと命令されます。
本能寺に鉄砲鍛冶の伊平次がいると聞いてやってきますが、いません。
同じく伊平次に会いに来た足利義輝一行と対面しますが、彼らも伊平次の行方を知らないといわれてしまいます。
その時、京の情勢や室町幕府をめぐっての権力闘争の話を聞きます。
遊郭で伊平次を見つけますが、彼は昔明智光秀が助けたことのある人物でした。
鉄砲の仕組みなどをしりたい明智は、伊平次の力を借りれることになりました。
平和への抑止力としての鉄砲
あちこちで領土争いが起こっており、室町幕府の支配がガタガタになっている時代です。
元をただせば、室町幕府の将軍家と官領家の権力闘争が招いた事。
一応の和睦が成り立ち、不安定ながらも両陣営が収まった状態の京都に明智光秀はやってきます。
将軍家も官領家も鉄砲の威力をしるからこそ、両陣営がこっそりと鉄砲を集めようとしています。
パワーバランスの均衡が崩れる事を恐れて、お互いに同じ数だけ鉄砲を揃えようと約束します。
が、松永久秀は光秀に戦の道具として使い勝手の悪い鉄砲を集めても意味がないと意見されます。
それに対する松永久秀の回答は
「鉄砲の威力を知るからこそ、鉄砲が戦争の抑止力になる」
「わしも戦争は嫌い。したくないから鉄砲を集める」
でした。
冷戦時代の「核の抑止力」や「恐怖の均衡」の理論ですね。
戦争を継続中の人間の、現実的な平和論でもあります。
今までの大河ドラマは「戦はイヤでございまする」といきなりお花畑の平和論を唱える事が多かったので、意外でした。
松永久秀という人物を描く上で重要なセリフと場面が多かった
彼が実際にこの理論を唱えていたかは、わかりません。
しかしこの大河ドラマで彼を描く上で、重要なセリフとシーンが多い回でした。
- 「戦争はイヤ」といいつつも戦争が起これば現実的に対処する
- 実際に使うかどうかは別として、戦力となる物は手にしておきたい
- 交渉がうまい
理想を掲げながらも、いざ事が起ったときの準備を抜け目なくする人物。
決して堅物ではなく、柔軟に流れを読んで自分に有利に物事を図れる人物。
今回、そんな人物に彼が見えました。
冒頭で斎藤道三が「戦闘に役に立たないという鉄砲を室町幕府をはじめとして手に入れようとしているものがいるのか」という「行動の理由」をまず知りたいと思うのと対比になっていて、お互いの立場や個性を感じます。
光秀がまだ時代の表舞台に出てこず、ドラマの中で「ものを知らない子供」の役割を与えられているので、余計に彼の性格が引き立ちます。
鉄砲の存在をとても丁寧に描いている大河ドラマ
この大河ドラマを見て思うのは、今のところ物語の真の主人公は鉄砲であることです。
鉄砲の存在は、日本の歴史上でとても大きなものです。
鉄砲の威力はわかりますが、まだどう使うべきか、そもそもどういうものなのか。
登場人物たちが手探りで探っています。
その様子は、何か新しい時代を手に入れようと試行錯誤しているように見えます。
実際鉄砲の登場は、日本の戦闘スタイルを変えました。
代表的なのは、桶狭間の戦いでしょうか。
突き詰めていけば、鉄砲は当時の人々の思考方法と身分をガラッと変えました。
商人達が実質的な自治権をもつ街の誕生、それによる新しい価値観、新しい技術の誕生など。
この先鉄砲という存在が、光秀の人生にどのような影響を与えていくと描かれるのでしょうか。
密かに注目しています。